将来の登山スタイル

ヤマレコの将来像を考えるにあたって、趣味登山の情報通信技術(ICT)とのつながりが進んだ少し将来の登山スタイルを妄想してみました。

将来のイメージ

ヤマレコを作ってみて感じていることとして、山と登山におけるICTはあくまでも補助的なツールとして登場するもので、「人が山を登る」という活動をサポートするものでしかないということです。
登山を楽しむ活動の中で、上手にICTの力を借りることで、趣味として楽しめないような時間がかかる作業を排除して、安全登山のための情報がいつでも・どこでも手に入るようになると思います。

将来的には、小型で持ち歩くことができてバッテリーが十分に長続きし、ネットワークに常時繋がる端末(いまのスマートフォンの進化なのか、Google Glass的なものの進化なのかは分かりませんが)ができあがって、人と人がシステムを介してつながることで、色々な事ができるようになる可能性があります。

例えば、近い将来だとこんな感じのことができるようにならないかなと考えてます。

  1. 行く場所を決める
    • 自分の今のスキルを踏まえたうえで、いまオススメの登山コースが提案してもらえる。
    • そこで見られる景色が、そのままの形で擬似体験できる(Glassや全方位プロジェクタなど)
  2. 計画を作る
    • 時間や場所などを加味して行きたい場所を選ぶと、コースタイムや危険箇所などを含む行程プランが自動的にできあがる。
    • 日程を決めると、その登山道の直近の状況や、ルート沿いの天気(天気図や予報)の情報を逐次報告してもらえる。
    • 無謀なプランを立てていないか、事前に最終チェックしてもらえる。
  3. 装備を整える
    • 自分の持っている装備になく、次の登山で買ったほうがいい装備が分かる。
    • ボタンを押すだけで、オンラインで発注できて、必要な装備・食べたい食材が登山日までに届く。
  4. アプローチ
    • 当日忘れ物がないか、家を出るときに確認・警告してもらえる。
    • 登山口までの行き方・見つけ方をナビゲーションしてもらえる。
    • 入山したことが、家族や友人に自動的に伝わる。
  5. 登山中の情報発信
    • いまどこにいるのか?が、自分が確認できるだけじゃなくて、家族や友人にもリアルタイムに伝わる。
    • いつどこを通過したのかが自動的に記録される。
    • 登山で感動したこと(文章)、見たこと(映像)をリアルタイムに記録できる。
    • 友人にもリアルタイムに共有できる。
  6. 登山中の安全確保
    • ルート上の危険箇所が近づいてくると、通知してくれる。
    • 危険な雨雲が発生した場合、行動中に警告してくれる。
    • 自分の足りないスキルを学びながら歩ける(読図、歩行技術、etc)。
    • 登山道から外れると、引き返すように警告を出してくれる。
    • 遭難発生時の対処をリアルタイムにサポートしてもらえる。
  7. 下山後
    • 安全な場所まで下りたことが、家族や友人に自動的に伝わる。
    • 自分の好みに応じた、下山後の温泉や打ち上げ場所の情報がもらえる。
    • 自分の見た・感動した景色を、そのままの形で共有できる。

書いてみると、単に機能を作るだけなら既存のシステムを組み合わせて、今のスマートフォンがあれば作れるような気もします。
しかし、実際に作ろうとするとコストもかかるし、(少なくとも登山だけだと)ニッチな領域で収益も見込めないから、どこかの企業が構築してくれる可能性も低い。でもすでにシステム&コミュニティが融合しているヤマレコとしてなら、こういう世界を少しづつでも創っていけるはずです。


あとはオマケです。

登山技術の向上について

昔とは違って、いまは山岳会などのコミュニティに所属していない登山者の割合が多くなっています。その場合、今まで得られてきたコミュニティの中で相互に教えあうという仕組みができない、独学でやるしかない状態になっていると思います。
独学に委ねられると、自主的に登山技術を磨いて山に行く、ということができない人も出てきてしまいます。もちろん独学でも必要な技術分野の本を買って勉強して、講習会に出て、山に行って実践して、という人も多くいると思います。

いま行きたい山があるけれど、その山が自分が持っている登山技術を超える場合にどうするか?というと、

  1. ツアーに参加して連れていってもらう
  2. 友人・先輩に連れていってもらう(山岳会はこれ)
  3. 独学で自分のレベルを上げて行く
  4. 技術が不足していることを知らずに行ってしまう

のどれかになると思います。

ヤマレコを通じて、4の状況を排除して1〜3の強化ができるようにしたいと考えています。可能性としては、ヤマレコ参加者のコミュニティを土台として「暗黙知化されている知識や技術」を文章・映像化して相互に教えあう仕組みを作ったり、自分の登山技術レベルを可視化してレベルアップをサポートする仕組みを作るというのもあると思います。


そもそも山に行く活動って、どんなことをしているのか?

「山に行く」と決めたら、やることは多岐に渡ります。とりあえず思いつく範囲で、粒度にとらわれずに目的と行動パターンを書きだしてみると・・・

  1. どこに行くか?を決める
    • ハイキングガイドなどの本で探す
    • 友人におすすめの山を聞く
    • ネットで探す
  2. 必要な装備を知り、準備する
    • 雑誌や本で知る
    • 友人の進めで知る
    • ネットで知る&買う/レンタルする
    • 店舗に行って知る&買う/レンタルする
    • 知らない&買わない
  3. 知識・技術を習得する(歩行技術、登攀技術、読図、天気、無線、リーダースキル、撮影技術、など)
    • 本を読む
    • ネットの記事を読む
    • 友人・先輩から教えてもらう
    • なにもしない
  4. 必要な技術を習得する
    • 本を読んで自分で実践してみる(独学)
    • 講習会に参加する
    • 友人・先輩から教えてもらう
    • なにもしない
  5. 登山口までのアクセス情報を調べる
    • 本で探す
    • ネットで探す
    • なにもしない
  6. 予約をする
    • 交通機関(飛行機、電車、船など)
    • 宿、山小屋
    • なにもしない
  7. いまの山の情報を調べる
    • 電話で聞く: 役場・山小屋
    • ネットで探す(ブログ、ヤマケイオンラインなど)
    • 調べない
  8. 天候を調べる
    • 天気予報を見る(ネット/TVなど)
    • 天気図を見る
    • 天気図を描く
    • 空を見る
    • なにもしない
  9. 装備分担
    • 体力を加味して、共同装備を振り分ける
    • 必要ないからやらない
  10. 登山計画書の提出
    • 現地に登山ポストがあったら、用紙に記入する
    • ネットで提出する
    • 家族に○○山に行ってくる、と言う
    • 作成するが提出しない
    • 作成しない
  11. パッキング
    • 軽量化してつめる
    • バランスを確認する
    • 適当につめる
  12. 入山連絡
    • 家族に「行ってきます」と言う
    • しない
  13. 行動記録
    • 写真を撮る
    • 動画を撮る
    • コースタイムやコース状況、感想のメモをノートに書く
    • GPSログを取る
    • なにもしない
  14. 予定変更(行動判断)
    • 計画書に案が複数あり、その中から状況に応じて選択
    • 計画で決めた予定を遵守する
    • ある程度漠然と考えておいてその場で適当に判断する
    • そもそも予定がない
  15. ペース配分
    • パーティの体力を見ながら調整
    • 予定に合うように調整
    • 何も考えない(自分のペースで行く)
  16. 食事
    • 行動食を持っていく
    • 山小屋で買う
    • 食事用の準備をして現地で作る
    • なにもしない
  17. 宿泊
    • テントを設営する
    • 山小屋に宿泊する
    • 宿泊しない
  18. 山中からの連絡/情報発信
    • 電話で連絡を取る
    • 無線で連絡を取る
    • メールする
    • ネットで書き込む
    • なにもしない
  19. 下山連絡
    • 家族や友人にメール
    • 家族や友人に電話
    • しない
  20. 下山後
    • 風呂に行く
    • 打ち上げをする
    • 直接帰る
  21. 登山の記録を作る
    • 行動記録をもとにまとめる
    • 記憶を頼りに書き起こす
    • 写真やログをPCに取り込む/アルバムを作る
    • なにもしない
  22. 登山の記録を公開する
    • ブログに書く
    • 山岳会の会報に書く
    • なにもしない

分類はめちゃくちゃですが、書き出したらいくらでも出てきますねー。自分の責任できちんと準備して山に行きたい(でも何をしたらいいか分からない)と思ったとき、ヤマレコがサポートできる範囲をどんどん広げておいて、「なにもしない」の項目をなくせるようにしていきたいと考えています。
もちろんヤマレコで全部はできないので、今あるシステム・組織とも連携させてもらいながら。

まあ、要するに頑張ろうかなと。